導入事例

社員の能力開発や学ぶ風土づくりに積極的に取り組む企業を取材しました

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株式会社マツモトキヨシホールディングス

「マツモトキヨシWAY」に基づき、段階的に教育機会を提供し、次世代のリーダーを育成

「学ぶ風土」を醸成している組織に贈られる「JMAM通信教育優秀企業賞」。今回紹介するのは、「美と健康の分野(ヘルス&ビューティー事業)」に特化した経営戦略で「売上高1兆円企業」をめざすマツモトキヨシホールディングス。同社は「社員一人ひとりが成長することで、会社が成長する」という信念に基づき、自己啓発を能力開発の柱の1つに据えている。加えて、通信教育とアセスメント試験を昇格要件として導入。2014年度からはさらに次世代リーダー育成にもその施策を広げ、集合研修とも連動させて活用している。

執行役員 人事部長
小部真吾氏
株式会社マツモトキヨシホールディングス
会社名
株式会社マツモトキヨシホールディングス
プロフィール
1932年、創業者の松本清氏が千葉県松戸市に個人経営の松本薬舗を創設。同店がマツモトキヨシホールディングスの前身である事業会社マツモトキヨシの礎となる。1954年、法人組織化。アメリカで学んだチェーンストア理論を取り入れて多店舗化を推進し、1987年には都市型ドラッグストアの先駆け「上野アメ横店」をオープン。1990年に株式を店頭公開、2007年、マツモトキヨシホールディングスを設立し、業界シェア10%、グループ店舗数2000店、売上高1兆円をめざして邁進中。
資本金:220億5100万円、売上高:4953億8500万円、連結従業員数:正社員6089名、パート8527名(8時間換算)、計1万4616名(2014年3月末現在)

組織成長のカギは人材育成

黄色い看板と、創業者の名をカタカナ表記でそのまま付けたインパクトの強い店名が首都圏でよく見られるようになったのは1980年代のこと。その店こそ『マツモトキヨシ』。一度聞いたら忘れられない名前のドラッグストアだ。多店舗展開を進めた当時から独自の存在感を放っていたマツモトキヨシは、東京・上野にオープンした「上野アメ横店」の成功によってさらに独自性を強めていく。「上野アメ横店」は明るく開放的な入口、医薬品や健康食品だけではなく美容関連の商材にも力を入れた品揃え等、現在のドラッグストアの基本となるスタイルをつくった。
マツモトキヨシは、前述したドラッグストアに見られる独自色を徹底して打ち出すと同時に、国内で認識され始めた「セルフ・メディケーション」(病気になってから病院で治療を受けるのではなく、自分の健康は自分で守ろうという予防医学的な考え方)の流れに乗り、“地域のかかりつけ薬局”として急速な多店舗化に成功。1995年には業界売上日本一となり、名実共に日本のドラッグストアのリーディング・カンパニーとなった。
マツモトキヨシホールディングス(以下、同社と表記)は全国を7つのエリア(北海道・東北、甲信越、関東、東海・北陸、関西、中国・四国、九州・沖縄)に分け、それぞれの地域でドミナント化(ある一定の地域に集中的に出店すること)を推進し、さらなる成長をめざしている。
経営戦略上の課題は、狭小商圏モデルの確立とOne to Oneマーケティングの深化、地域医療と連携した調剤事業の拡大など複数あるが、全ての課題のカギとなるのが「人材の確保と育成」だ。同社の人材育成について、詳しく見ていこう。

教育体系と4本の柱

同社の能力開発の基本的な考え方は、グループの経営理念である「1st for You. あなたにとっての、いちばんへ。」にある。これについて、執行役員人事部長の小部真吾氏は次のように語った。
「経営理念の“あなた”とは、お客様はもちろん、当社に関係したステークホルダー全員を示しており、そこには従業員も含まれています。“会社にとってのいちばん”とは何か、“従業員にとってのいちばん”とはどのような状態かを常に考え、その状態に向けて人材を育成していくことが重要だと考えています」人と組織のあるべき姿を表しているのが、「マツモトキヨシWAY」だ。その一節に「全ての社員が創意工夫を凝らし、自由にアイデアを出し合い、失敗を非難したり恐れることなくチャレンジ精神をもって仕事に当たる」とある。自由闊達で、創意工夫に満ちた組織風土と、自ら考え、チャレンジ精神に溢れた人材。こうした風土を育み、人材を育成するために、同社はさまざまな制度の新設や見直しを行った。
例えば、ボトムアップ型の改善をめざす「社内提案制度」、社員のチャレンジ精神に火をつける「社内ベンチャービジネス制度」、出産後・育児中の女性社員の活躍を支援する「在宅勤務制度」や女性の管理職登用を積極的に推進する「チャレンジ店長制度」など、社員がやりがいをより高めるための制度づくりが進んでいる。
同時に、教育研修体系も整備した。現在も店舗数を拡大し続けている同社では、次世代の経営を担う人材、薬剤師に代表されるプロフェッショナル人材を計画的に育成していく必要がある。こうした人材を、「階層別研修」「職種別研修」「自己啓発」に「OJT」を加えた4本の柱で育成していくというのが基本的な考え方だ(図1)。

図1 研修体系

階層別研修は、新入社員研修に始まり、店長研修、管理職研修、評価者研修まで段階的に行われる。そして職種別研修は、薬剤師、医薬品販売、管理栄養士、化粧品販売等、職種ごとに必要な知識やスキルを習得していく。
自己啓発も重要な役割を果たしている。その核となるのは、通信教育だ。
「そもそも、当社のように多店舗展開している企業では、集合研修の実施は物理的に難しいという問題があります。そこで、研修でなければできないことと、通信教育で学ぶことができる知識を中心とした要素を切り分けて、それぞれの教育手段を適宜活用しながら能力開発を行いたいと考えました。当社は『自分で考え、自ら動く人材』を求めています。その観点で言うと、通信教育は情報を与えられるのではなく、自分が求める知識を自ら学んでいく学習方法であり、当社が求める人材を育成するのに大変適していると思います」(小部氏、以下同)
さらに、OJTに関しては「ブラザー・シスター制度」を導入。
入社して間もない時期から3年間にわたり年齢や社歴の近い先輩社員が、同社の「WAY」を理解してもらったうえで仕事上の不安や悩みの解消、業務の指導・育成を担当。上司とは別の相談相手ができることで、必要なスキルや技術を身につけながら、会社に馴染むことができる。
指導・育成にあたる先輩社員にとっても、マネジメントの技術を身につけるための場であり、OJTならではの良い循環をもたらしている。

昇格要件としてMBAを学ぶ

また同社は、通信教育を昇格要件、自己啓発、そして次世代リーダーの育成に活用している。それぞれの施策について見ていこう。
まず昇格要件については、同社の資格体系で定義された特定の階層からの昇格に、定められた通信教育コースの修了と認定アセスメントの合格が義務づけられている。
具体的にはL層(育成層)からS層(管理監督者層)へ、S層からM層(マネジメント層)へ、M層からE層(経営幹部層)へ昇格する各段階だ(図2)。

図2 昇格試験:スキル強化の視点

この中で、S層からM層、M層からE層への昇格には、MBAの知識が求められている。
S層からM層への昇格には組織マネジメントの観点からマネジメントや財務経理の能力が求められ、通信教育でマネジメント・コントロールやアカウンティング等を学ぶ。
M層からE層への昇格には、経営管理の観点から戦略形成や成果の安定性が求められ、通信教育で変革型リーダーシップやファイナンス等を学習する。以上のように、MBAの要素を店長クラスから身につけさせて、段階的に経営人材を育成していこうというのが昇格要件の狙いだ。
「小売業にとっては1つひとつの店舗の運営が、経営そのものなのです。お客様と最も近い最前線の現場が店舗であり、店長は店舗の価値を高めながら数字をつくっていく─これこそまさに経営ですから、店長にMBAの知識が必要だというのは当然のことなのです」

次世代リーダーを早期に育成

経営人材の育成については、新たな取り組みが始まっている。それが「経営人材早期育成プログラム」という施策だ。これを実施する背景には、次のような状況がある。
同社は、全国の7つのエリアで意欲的に出店すると共に、地域の優良企業との資本・業務提携などによって事業会社を増やし、グループを拡大してきた。
「グループが急激に拡大してきた結果、地域で経営を任せることができる人材が不足してきました。また、これまで通信教育の後にアセスメントを行って経営人材の昇格要件としてきましたが、知識の習得後にいきなりアセスメントを行っても実力を発揮することが難しいということもわかってきました。そこで、新たな方法で経営人材を育成する必要が生じてきたのです」
このプログラムの受講資格者は、資格等級でいえばM層、役割でいえば部長手前の次長職で、一定の評価を受けている社員が対象となる。
そこで、まずMBAの知識を通信教育で身につけてもらい、同時に1日8時間の集合研修を事例学習やケース演習を中心に3回実施する。ここまでが「経営理論の習得」の段階となる。
その後、さらに総合実践演習を中心とした集合研修を3日間実施して、戦略を描き実践する「経営デザイン力の向上」をめざす。そして、最終的にはアセスメントで評価を行い、合格した者が社長人事へ抜擢される。
「通信教育、集合研修、アセスメントを連続して行い、“経営の理論とデザイン”を身につけてもらおうという考えです」
急速に拡大を続ける同社にとって、経営人材の早期育成は、まさに喫緊の課題となっている。

レベルに合わせた推奨メニュー

通信教育プラス集合研修で「経営の理論とデザインを身につけてもらいたい」と語る小部氏。

同社では前述の通り、自己啓発も人材育成の柱の1つと捉えている。
「自立的な人材を求める会社としては、従業員の学習意欲を高めるように、通信教育のメニューを幅広く揃えておくことも重要な施策だと考えています」
そこで、数多くの通信教育コースを用意し、その中から「新人~入社2・3年目」「店長をめざす人」「店長レベル」「本部スタッフ」など、それぞれのレベルに合わせたコースをピックアップし、「推奨コース」として募集用ガイドブックに掲載している。
「私自身、生涯学習の大切さを実感しているのですが、学習は学校を卒業して社会人となってからも続くもの。ですから当社の従業員にも、ぜひ自主的な学習を続けてほしいと考えています。ただし、自主的な学習といっても好きなことだけを勉強するのではなく、会社の事業につながる学習、組織に貢献できる学習をしてほしいという思いから推奨コースを選定しています」
同社は、海外における新たなH&B(ヘルス&ビューティー)事業モデルの構築も視野に入れている。その時のために、語学はもちろん、異文化コミュニケーションなど、社員のグローバルな視点を養成する教育も検討したいという。
「流通小売業においては、これまでに培った経験や知識も重要ですが、今後は特に変化への対応力が重要となります。それを養うためには、研修も毎年常に見直していく必要があると感じています」
こうした思いが、「経営人材早期育成プログラム」に代表される新しい取り組みに表れている。組織のさらなる成長に向けて、新たな人材育成施策を打ち出すマツモトキヨシホールディングス。同社の次の一手がどのようなものになるのか、引き続き注目していきたい。※掲載内容やご登場いただいた方の役職は取材当時のものです

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